デザイナー幼少期
ファッション業界からも絶大な支持を受ける「Sacai(サカイ)」を手掛けているのが、女性デザイナー阿部千登勢(アベチトセ)です。
岐阜県生まれの阿部千登勢は、母親が仕立ても行う洋服店で働いており、幼少の頃から服に囲まれ育ちました。小学生の頃テレビで見かけたファッションデザイナーに魅了され、ファッションデザイナーになる夢を持ち始めます。
専門学校に入学するため上京、卒業と同時に入社した大手アパレルメーカー ワールドでは、2年間現在の基礎となるアパレルの、いろはを学びました。
コムデギャルソンへの入社
その後、憧れの会社である「COMME des GARÇONS(コムデギャルソン)」に1989年入社を果たし、現在に続くサカイの世界観のベースとなるスタイルを見つけます。この頃のCOMME des GARÇONSは、ビッグブランドへの成長過程を進む途上期でした。
現在の「JUNYA WATANABE COMME des GARÇONS」を率いるデザイナー渡辺淳也が、ブランドを立ち上げる直前の時期で、ブランド立ち上げのチームに阿部千登勢も加わることになりました。
世間の風潮、トレンドに重きを置かず、1から新しい物を生み出すことに熱意を注ぐリーダー達に影響を強く受け、阿部千登勢にとってデザイナーの根本を構築する経験になります。阿部千登勢はCOMME des GARÇONSで、ニットのパタンナーや企画を立案するなど、実力を蓄えていきました。
結婚と出産
多くの経験を重ね、1996年デザイナーである阿部潤一と結婚し、1997年には妊娠・出産という女性の大きな分岐点を迎えます。会社に迷惑を掛けたくないという思いから、COMME des GARÇONSを退社し、子育ての道を歩むことになりました。
しかし、これまでの世界から一変した母親業は、社会から引き離されたような虚脱感を覚えるものでした。そんな様子を見ていた夫に、自分のブランドを立ち上げることを勧められます。育児の傍らで、ニットを主材にして作りあげた3着のセーターがサカイのスタートになります。
sacaiのスタート
日常の何気ないシンプルなスタイルにアイディアを加え、360度どこから見ても表情を感じるデザインが阿部千登勢の考える、サカイのコンセプト「日常に成り立つデザイン」です。
シャツやカーディガンなど普遍的なアイテムに、異素材をプラスしどんなシーズンにも対応できます。日常使いできるデザインがサカイの最大の特徴といえます。日常の延長線上にあり、新たな価値を生み出すファッションが、サカイ創業当時からの変わらぬスタンスです。
サカイは大々的な広告やファッションショーを行わず、人の繋がりでその名を広げていったブランドです。スタイリストや、バイヤーなどファッション業界の関係者が着用することで、徐々にその知名度を国内・海外に拡大していきました。
世界に名を広げる阿部千登勢とsacai
2007年には毎日ファッション大賞を受賞し、2009年にはメンズラインも展開を開始します。同年には、アウターで知られる「MONCLER(モンクレール)」から日本人で初めてのデザイナーに抜擢されます。これは、さらにサカイをワールドワイドに展開する大きなきっかけとなります。
2011年にはフランス パリでコレクションを開始し、9月には東京 南青山に初の基盤店をオープンします。2015年には、アメリカの大統領であるオバマ氏がホワイトハウスで主催するパーティーに阿部千登勢が招待され、大きな話題になりました。